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<ハマムの思い出>

僕は、温泉大好き人間の一人です。
 大きなお風呂にザッブ〜ン!と浸かり、空を見上げながら、
身体中の疲れがじわじわと癒されてゆく時間を味わい、
身体の隅々まで石鹸でごしごしと洗い上げ、そして湯上り後は、
キンキンに冷えたビールをググッと一気飲み。

シアワセ感でガオ〜!!と雄叫びを上げたくなるぐらいだ。

だが、毎日、東京で深夜まで働いているので、ホンモノの温泉には
そうしょっちゅう出かけては行けない。 そこでここ数年、よく行くのが
スーパー銭湯。 最近、郊外のあちこちに新しく造られているスーパー
銭湯はとてもきれいで、雰囲気もなかなかだ。

僕の妻も、温泉&銭湯好き人間で、子供の頃からよく週末になると、
親にせがんでお風呂屋さんに、連れていってもらったそうだ。

広い風呂場や、脱衣所に置いてあるマッサージチェアで
遊んだり、 風呂上りには、コーヒー牛乳を買ってもらい、
大きな扇風機の前で それを豪快に飲むのが最高で・・・等々と、
先日、妻が懐かしそうに 話していたのを聞いていた時、
僕も子供の頃にトルコでよく連れて 行かれたお風呂屋の事を思い出していた。
そして、突然、自分の腕やほっぺたに、
ヒリヒリするような痛み! が走った。

トルコにも、「ハマム」というトルコ風呂屋がある。 お風呂といっても
浴槽はなく、巨大な低温サウナのような感じだ。
トルコの田舎では、ハマムに出かけるのは、一家のレジャーのような
感覚になっていて、僕の家でも「日曜日にはハマムに行くよ」と
母が言うと、なぜか近所に住む親戚のおばたちが、朝早くから
ドッとやってきて、ピクニックの準備のように、たくさんのお弁当をつくり、
わざわざ小型バスまでチャーターして、大勢でにぎやかに出かけて
行くのだった。

僕がハマムのことを思い出すとき、「楽しさ」と「痛み」が同時に蘇ってくる。

「楽しさ」とは、もちろん、兄弟や、同年代の子供たちと一緒に、バスの中で
わいわいと騒いだり、風呂上りにみんなで美味しいお弁当を食べたり、
必ず誰かが持ってくる「ダルブカ」という太鼓を叩いては、大人も子供も
一緒に踊ったりして、楽しい時間を過ごしたこと。

そして「痛み」とは・・・垢すりだ。
僕の父方の叔母に、垢すりが趣味みたいな人がいて、この人は
僕ら子供の身体が、サウナの熱で温まってきた頃を見計らうと、
「さあ、垢すりを始めるよ!」と俄然はりきって、僕らを順番に捕まえ、
全身をゴシゴシゴシゴシ・・・・・と、ありったけの力で擦るのだ。
それがもう、痛いのなんの! 身体全身はもちろん、まで擦られるのだ。
彼女に垢すりされた子供たちは全員、その他のお客の子供たちとは、
まるで人種が違ってしまったみたいに、真っ赤っかにされてしまい、
大抵は終わる頃には泣いていた。
僕は、もともと皮膚が弱いほうだったので、ハマムに行った日は
夜になっても、身体と頬がヒリヒリと痛くて眠れず、熱が出てしまった
事もあった。 

と、こんな話を妻に聞かせたら、かなり呆れていた。
「それじゃ、お風呂嫌いになっちゃうんじゃない?トラウマになって。」

んっ・・・その指摘は、当たらずとも遠からずだ。
僕は前述のとおり、幸運なことにお風呂嫌いにはなっていないが、
スーパー銭湯の施設内によくある、「韓国垢すりコーナー」の前を
通るたびに、今でもゾッとなって、顔を伏せてしまうのだ。

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